研究概要 |
本研究は,無菌室を使用する代表的な治療法である造血細胞移植を受けた患者が,血液・造血器疾患と診断されてから造血細胞移植を受けて現在に至るまでのこころのありようを記述し,プロセスの中で浮き彫りにさせたサブスタンティブセオリーの構築を最大目標としている.今回の研究目的は,その一部である造血細胞移植に挑戦する患者のこころのありようを明らかにすることである. 今年度は,研究実施計画に従って,患者へのインタビューを開始すると同時に、データ分析も開始した.ところが,当初予定していた分析方法を用いると,患者によって語られた体験が分断されてしまい,生々しさが削ぎ落とされるという状況を生んだため,記述方法を検討し修正した.そして,個々の患者によって語られた体験を時間軸に沿って構成し,丁寧に記述することによって,個々人によって異なる体験や類似する体験を生々しく記述することや深みのある記述をおこなうことが可能になった. 現段階で得られた新たな知見は,次の通りである.造血細胞移植を目的として入院治療を受ける患者は,治療のみならず家族によってもたらされる苦しみ,患者の気持ちが周囲の人に理解されない苦しみ,夫婦間の関係に歪が入るなどを体験していた.また,これらの体験は,入院期間内のみならず退院した後にも続くものであることから,患者は新しく誕生した自分を受け入れながら,人生を再設計しているようである.
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