体位変換方法の違いが患者にもたらす生理的な影響を評価するため、心拍・呼吸数・血圧を連続的に計測した。測定手順を安静仰臥位(3分間以上)-体位変換-安静座位(3分間以上)と設定し、体位変換方法には「被験者が自力で変換する方法:A法」「上体を起こしながら同時に身体の向きを変える方法:B法」「上体を起こしてから身体の向きを変える方法:C法」の3方法を採用した。21〜22歳の健常女性6名を被験者として、心電図・血圧・表面筋電図(胸鎖乳突筋・外腹斜筋)・呼吸数を測定した。心拍数・血圧は体位変換時に極大となった。変換後の血圧は、体位の違いによって初期の状態に戻ることはなかったが、いずれの方法とも約3分後までには高値は緩和されることがわかった。また変換後には数分程度の周期で変動がみられることがあり、初期状態と変換後の違いを把握するためには、10分前後の測定時間が望ましいことがわかった。外腹斜筋の筋電図から体位変換時の興奮を積分すると、その大きさはC法<B法<A法であったため、自力での変換が最も大きな負担をもたらした。しかし、同時に計測した胸鎖乳突筋の興奮はC法<A法<B法の順であったため、測定部分によっては、必ずしも介助による体位変換が自力変換より安楽であるとは限らないことがわかった。また心拍変動のスペクトル解析により、体位変換は心臓血管系に関しては交感神経活動の亢進をもたらすことと、変換方法の違いによって、この自律神経の活動バランスにも違いが見られることが明らかになった。
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