本年度は、目的1.国内外の文献より、看護に関連した薬理学の構成内容を抽出する。と、目的2.国内の看護系大学、短大で行われている薬理学及びそれに関連するシラバス・教授内容、時間数などを実態調査し、現状を明らかにする。を中心として、基礎教育の現状を明らかにすることを目的とし、薬理学に関連する文献及び視聴覚教材の検索及び実態調査を実施した。また、臨床看護師2名に面接をし、実態調査に使用する質問紙及び概念枠組みを作成することに役立てた。 目的1をもとに、文献検索を実施した。その結果、与薬ミスには、業務の多忙、不注意によるもの、薬剤の多種・多様性などの様々な要因が関連しているもの、看護師の知識と対象把握の不十分さも指摘されている。在宅ケアにおいては、その場での与薬に関する判断及び薬剤管理への教育などが必要とされていることも指摘され、ミス、ニアミスが生じていることも調査されている。アメリカを中心とした英文献などでは看護の薬理学に関連する文献は、看護師自身が著作に関わっており、その構成も看護過程にそった内容になっている。しかしながら、日本の薬理学に関連する文献では、一部看護師の資格をもつ者が記述しているものがあるが、ほとんどは薬剤師・医師が記述したものであり、看護実践に必要な内容が精選され、記述されているのか疑問が残った。 また、目的2については、質問紙を作成し、プレテスト後、基礎教育の実態調査を実施した。実態調査は、看護系大学と短大の合計159校を対象とし、1.薬理学の講義を担当している教員、2.与薬の授業を担当している教員、3.臨地実習を担当している教員対象のものの3種類を実施した。回収率は、1・2は約28%、3は約42%であった。その結果、薬理学、与薬の授業共に、単位・時間数・開講時期などは各教育機関によって幅があり、卒業時に獲得して欲しいと考えている能力には共通性があるものの、実習では、実際に学生が指導の下に与薬の実際を体験することは少なく、アセスメントが中心になっていることなどが明らかになっている。今後検討を加え、来年度に継続させていきたい。
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