1.既存の文献から調査方法を検討した 高齢者の自宅退院と社会的ネットワークとの関連を調べるにあたり、公衆衛生学的視点から大規模になされている地域の高齢者を対象とした調査や、社会学分野で多くなされている社会的ネットワークに関する研究などから、本研究で効果的に社会的ネットワークを測るための調査方法を検討した。 2.調査実施医療機関に関する情報収集を行った 医師およびソーシャルワーカーより情報収集を行い、対象者を再検討した。平成12年国勢調査によると独居高齢者も増加しているが、高齢夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)が大幅に増加しており、調査を実施する医療機関についても高齢入院患者のうち高齢者二人世帯が多い状況であった。また、先行研究では、高齢者の自宅退院には主介護者以外に副介護者がいることが大きく関係することを示唆している(二木1983、石川1998)が、上記医療機関でも独居高齢者に限らず高齢者二人世帯への退院援助においてもしばしば困難を伴うことが分かった。 3.実際に自宅退院した対象者の生活状況を把握した 脳梗塞を発症し、介護保険要介護認定による要介護度が3および2であった女性高齢者の退院後の状況を把握した。独居の前者では、退院時に調整したサービスは1ケ月以内に内容変更をするに至り、高齢の夫と二人暮らしの後者は、退院1ケ月後には身体活動が少なく食事も偏り、ADLの低下や脳梗塞の再発を招きかねない状況で、ともに身体的不調を訴え近くの診療所にかかるなどしていた。これらより、入院前の本人の生活スタイルや活動範囲を他者との関わり等も含めていかに詳細に把握するかが重要であるということを再認識した。 1〜3をふまえ次年度は、調査対象に65歳以上の高齢者二人世帯も含め、独居高齢者および高齢者二人世帯の状況がより把握できるような質問紙により本調査を行うものとする。
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