看護学実習は変化する過程の中で展開されるため、指導の中で学生個々の学習状況を判断し方同性を定めていく「評価」を行うことは非常に難しい。本研究では、Dewey教育理論に依拠して開発した「評価」試論を実際の看護学実習評価に適用し、その有用性を実証することを目的とした。 研究方法は質的帰納的デザインを用いた。データ収集期間は2001年9月〜2001年11月である。研究者自身の実習指導場面(成人看護学実習、看護学総合実習)をテープ録音し、逐語録にした。他に指導記録と学生の実習記録を参考資料とし、それらを照合して指導場面を再構成し、学習経験の変化と指導との関係を「評価」試論から導かれた「評価」モデルに基づき分析した。分析の際、看護教育学の専門家によるスーパービジョンを受けた。「評価」モデルは学生の「非教育的な経験」が教師との関わりによって「反省的思考」を展開することで「教育的経験」へと再構成されるという枠組みを基盤とし、教師が「連続性」と「相互作用」という原理に鑑み、学生の経験を教育的経験へと導く関わりを示している。 事例分析の結果、「評価」モデルが学生の学習状況と教員の指導の方向性を説明できることが明らかになった。学生が困難に感じる状況が学習課題を達成していくための一つの契機となり、そこを手がかりにして、教師が学生の状況を評価し、次の指導の指標を導くことができるようなモデルを示すことができた。したがって、動的な過程の中で学生の学習状況を判断するモデルとして、この「評価」試論は有用性で示されたと考えている。 今後の課題として、看護学の各領域にわたって適用できるかの検討、他の教員が活用できるような具体的な方法論への展開といった実証的研究が挙げられる。
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