本研究はゴム製湯たんぽと電気毛布の生体への影響を比較し、器具の違いによる保温と安楽の効果を明らかにすることを目的とした。研究の同意を得た健康な成人9名を対象に2種類の温罨法を実施し、生理学的指標(皮膚温・皮膚血流量・腋窩温・心拍変動)、主観的評価(温冷感・湿度感・快適感)、寝床気候の変化を検証し、以下の結果を得た。 1.ゴム製湯たんぽは足趾の皮膚温・皮膚血流量・冷感を早期に改善し、75分以降には迷走神経活動を亢進させ交感神経活動を抑制して安楽の効果が見られた。 2.電気毛布は、全身を暖める効果はあるが足趾の冷感の改善はゴム製湯たんぽよりも遅く、90分以降交感神経系活動の亢進と迷走神経系活動を抑制が見られた。 3.電気毛布は使用時間に伴い手掌と足趾の湿度感および寝床内の足元と腰部の湿度が上昇し、口渇感と快適感の間に低い負の相関を認めた。 温罨法は日常的に行われる看護援助のひとつで、経験的に実施されることが多い。準備の簡便さや、湯たんぽによる火傷の危険から、電気毛布の使用頻度が近年増す傾向にある。しかし、器具選択時の化学的根拠や実施中の観察の指標で明らかにされた部分は少なく、適切とはいえない器具が使用されることがある。電気毛布の継続的な使用による交感神経活動の亢進、体温上昇、発汗等の生体への影響と、ゴム製湯たんぽの安楽の効果に関する結果は、看護者が温罨法を実施する上で器具選択の根拠と観察の指標に有効な基礎的資料となりえることが本研究で示唆された。
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