研究概要 |
【研究目的】人工股関節全置換術後患者の日常生活や心理的変化の過程を術前と比較して、術後の在宅生活の実態を明らかにする。【研究方法】人工股関節置換術を受け、研究に同意の得られた術後1ヵ月、6ヶ月、1年、2年後の外来通院患者27名に対し、半構成的な面接調査を実施し、遂語録を質的帰納的に分析した。【結果】ADLや身体機能については、術後全体としては疼痛や歩行障害の改善により多くの患者が、「トイレに間にあうようになった」「近所の人とのつきあいに行けるようになった」と生活行動の拡大に対する満足感を表していた。心理面では「前は死んだ方がましだと思っていたが、今は何にでも挑戦しようという気になった」「家族に迷惑をかけないですむのがうれしい」「痛みがなく気持ちが楽になった」と痛みがない喜びや将来への希望が示された一方で、「漠然とはずれそうで怖い」といった脱臼や再置換術への不安や「もっと日常生活に不自由ないと思っていた」「障害者になった自分がショック」と否定的な感情も示された。経過別にみると、術後1ヵ月の患者は「まだ不安で浴槽にはいったことはない。シャワーだけ」「靴下がはけない」「炊事だけはなんとかしている」と日常生活が完全に自立できていない場合があり、社会活動を始めている者は少なかった。また,在宅生活での様々な現実に試行錯誤で取り組んでいた。術後6ヶ月以降の患者は日常生活はほぼ自立しており、「人前に出ても恥ずかしくない」と歩容改善や除痛に対する満足が高いが、「頑張ってもこれ以上よくならない」「人工関節を長くもたせるために前のように動いていない」と個々の生活スタイルにあわせて在宅生活を行っていた。
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