本年度は、さまざまな運動様式によるトレーニングが腱組織の粘弾性に及ぼす影響を検討するために、急性及び慢性の変化について検討した。まず、発揮張力の大きさ、持続時間の相違が、運動後の腱組織の変化に及ぼす影響を調べた結果、1回あたりの運動時間の長い試行において運動後に腱組織がコンプライアントになるという結果が得られた。さらに、その結果を踏まえて、持続時間の異なるアイソメトリックトレーニングを実施した。その結果、筋力及び筋量の増加は同程度であったものの、運動時間の長いトレーニングの方が腱組織の粘弾性の変化が著しかった。すなわち、トレーニング様式により、筋および腱組織における適応が異なることがうかがえた。さらに、障害予防やパフォーマンス向上を目的としたウオーミングアップの生理的意味を検証するために、スタテイックストレッチングの急性及び慢性の影響を調べた。その結果、ストレッチングは腱組織の弾性(スティッフネス)には変化をもたらさないものの、粘性(ヒステリシス)を有意に低くすることが確かめられた。このことは、関節の柔軟性と腱組織の弾性との間に有意な相関関係がみられなかったことからも、ストレッチングによる腱組織の粘弾性に及ぼす影響が明らかになった。来年度は、上記の結果を踏まえて、より実際に行われているトレーニング様式に近い、伸張性収縮、瞬間的に大きなストレスのかかるバリステイック運動(プライオメトリックス)およびゴムチューブなどを用いた終動負荷法などについて急性及び慢性の影響を検討する予定である。
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