本年度の研究は13年度からの研究の総括に相当しており、英国におけるスポーツ研究のルーツとカルチュラル・スタディーズの交錯点について最終的な結論を導くことにあった。一連の研究成果は、これまでにも国際学会において公表してきたが、本年度の国際学会は、日本で開催され、また開催テーマが「ローカル・アイデンティティーとスポーツ」であったため、本課題研究の趣旨より領域を狭めるものとなり、本研究のタイトルで直接的な公表を行うことは困難であった。しかしながら、こうしたテーマの下で行われるスポーツ史研究は、多様な領域にまたがる文化史家との交流なしには実現できないのが現状であり、イギリスの文化史家に来日を依頼し、学会組織委員会委員としてワークショップ・シンポジウムを企画、コーディネーターを務めた。国際学会報告書の作成においては、イギリス人研究者と共著で記している。また、カルチュラル・スタディーズの伝統を受け継ぐ、英国ド・モンフォート大学国際スポーツ文化史研究所International Centre for Sports History and Culture (ICSHC)教授、リチャード・ホルト、同研究所教授、トニー・メイソン(ウォーリック大社会史研究所より異動)らを中心とした社会・スポーツ史家の最近の著作の文献解題を示した上で、ミネルヴァ書房によるシリーズ、近代ヨーロッパの探究第8巻『スポーツ』の第1章に個別研究を示している。しかし、結論としては、スポーツ史研究における広義の意味での社会主義と文化主義との連帯の必要性の根拠を導くには、短期間の研究ではなしえることができないということであった。したがって、この種の研究は国際的な議論の動向を吟味しつつ、継続して行うことが重要と考える。この点の反省に立ち、平成15年度以降の研究に課題を発展させたい。すでに、平成15年度の課題研究として、「イギリスにおけるニュー・レフトとスポーツ史研究の潮流II-スポーツ史研究における政治文化的意味の分析-」を申請している。
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