研究概要 |
加齢にともない脳内の神経細胞が変性、脱落する。この加齢にともなう神経細胞死に対して、運動に抑制効果があるかどうかについて我々は研究を進めている。今年度は、持久性トレーニングが、脳内のアルツハイマー型痴呆関連物質[アミロイド前駆体蛋白(APP), presenilin 1,リン酸化タウ(PHF-tau)]の蛋白量を変化させるかどうかについて調べた。Wistar系の雄ラットを用い、生後4週齢時から10週間の持久性走トレーニング(速度30m/min、1日90分、頻度週に5回)を施した。トレーニング終了後、ラットの大脳、小脳、脊髄、筋肉(前脛骨筋、足底筋)を摘出し、各種蛋白の発現量をWestern Blot法により比較検討した。持久性トレーニングにより、大脳、小脳のAPPならびにpresenilin 1の発現量に有意な差はみられなかった。前脛骨筋および足底筋では、筋肉に特異的な95kDaのAPPが観察されたが、持久性トレーニングによる量的な変化はみられなかった。さらに大脳、小脳、筋肉のPHF-tau蛋白量は定期的な運動により有意に変化しなかった。以上のことから若齢のラットにおいては、持久性トレーニングによるアルツハイマー型痴呆関連物質の量的な変化はみられないことがわかった。
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