研究概要 |
加齢にともない脳内の神経細胞が変性、脱落する。この加齢にともなう神経細胞死に対して、運動に抑制効果があるかどうかについて我々は研究を進めている。今年度は、持久性トレーニングが、脳内のアルツハイマー型痴呆関連物質[アミロイド前駆体蛋白(APP),presenilin-1,リン酸化タウ(PHF-tau)]の蛋白量を変化させるかどうかについて、免疫組織化学的手法を用いて調べた。Wistar系の雄ラットを用い、生後4週齢時から10週間の持久性走トレーニング(速度20m/min、1日60分、頻度週に5回)を施した。トレーニング終了後、ラットの大脳、小脳,脊髄を摘出し、各種蛋白の発現量を安静群(Control)と比較検討した。大脳において、APP, presenilin-1とも海馬のCA1,CA3領域の錐体細胞、歯状回の顆粒細胞、さらには大脳皮質の錐体細胞層に免疫活性が認められた。しかしながら持久性トレーニングによる有意な免疫活性の変化は認められなかった。小脳においては、APP、Presenilin-1とも顆粒細胞、プルキニエ細胞に発現が認められたが、定期的な運動による分布様相の変化はみられなかった。以上のことから若齢のラットにおいて、持久性トレーニングは中枢神経系におけるアルツハイマー型痴呆関連物質に量的な変化を引き起こさないことがわかった。
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