研究概要 |
活動制限期間中に負荷したレジスタンス運動の萎縮抑制効果が,加齢に伴い低下する機序を解明する目的で,本年度は運動の筋萎縮抑制効果と収縮蛋白との関係について検討した.4,10,20ヶ月齢のFischer344系雌ラットを,各月齢で対照群,懸垂群,懸垂運動群の3群にグルーピングした.懸垂期間は3週間とした.懸垂運動群の動物には,等尺性の筋力発揮を主体とするレジスタンス運動を1日1回,30分間,週6日負荷した.3週間後,in situにおける最大張力と収縮時間,筋原線維蛋白濃度,ミオシン重鎖(MHC)アイソフォーム(IIb,IIx,IIa,I)の相対的比率を算出した.反対肢のヒラメ筋は,他の測定用に凍結保存した.懸垂により最大張力,筋横断面積あたりの最大張力の低下がみられ,前者は筋原線維蛋白含有量の低下に,後者は筋原線維蛋白濃度の低下に起因していた.懸垂に伴うこれら張力発揮能の変化に対する加齢の影響はみられなかった.懸垂により単収縮の収縮時間は短縮し,速筋化が確認された.この機能的変化はMHCIからMHCIIb方向のMHC構成比率のシフトにより説明された.この速筋化は加齢により低下する傾向が観察された.レジスタンス運動負荷は懸垂により低下した最大張力,筋原線維蛋白濃度の減少を抑制し,単収縮の収縮時間の短縮とMHC構成比率のシフトを抑制した.興味あることに,この懸垂による筋萎縮と速筋化に対するレジスタンス運動の効果は加齢に伴い低下した.以上の結果は1)活動制限による速筋化の程度は加齢により低下する,2)筋萎縮や速筋化に対する運動の抑制効果は加齢により低下することを示唆する.来年度は,熱ストレス蛋白と抗酸化酵素活性の変化から,本年度得られた結果に対する考察を加える.
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