本年度は、これまで作成してきた、要介助高齢者のためのADL(日常生活動作)能力評価指標を寝たきり高齢者および自立高齢者に対して実施し、要介助高齢者のADL評価に有効な動作のうち、要介助高齢者が寝たきり状態に陥る際に重要な評価項目や、要介助高齢者が自立する際に重要な評価項目を明らかにすることを試みた。これらの結果は、寝たきり高齢者から自立高齢者までをADL能力という尺度を用いて連続的に評価するうえで重要と考えた。 これまでに著者らが作成した要介助高齢者用ADL指標を、特別養護老人ホームや老人保健施設、養護老人ホームなどに入所する寝たきり高齢者、および地域で生活する自立高齢者に対して適用した結果、以下の事項が得られた。 まず、本ADL指標は17項目から構成されているが(17点満点)、項目間の難易度に一次元性が仮定されている。つまり、17項目の難易度に順序づけがなされている。本研究の結果、本指標の総合得点が5点以下の場合または、難易度の低い下位4項目(食事、トイレへの移動、寝返りする、字を書く)が成就不可能な場合、寝たきり状態に陥る危険性が高いこと、また、総合得点が13点以上の場合または難易度の高い上位5項目(ズボンをはく、ゴムズボンをはく、座位から立ち上がる、階段を上る)が成就可能な場合、自立水準に近い状態にあることが明らかにされた。 これらの結果は、単なる各動作の成就の可否だけでなく、高齢者集団の中での機能水準の把握や将来的な機能水準予測の可能性を示唆している点は非常に興味深く、また高齢者のADL評価においても有意義と考えられる。
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