研究概要 |
本年度は,次年度に実施するトレーニングに関する基礎的データを得るために特別養護老人ホームに居住する身体的に虚弱な高齢者男女14名(虚弱高齢者:82.3±7.1歳)と地域在住の健康な高齢者男女18名(自立高齢者:81.1±5.7歳)の下肢筋力,歩行能力,超音波法による踵骨の音響的骨強度を比較検討した.虚弱高齢者は旧厚生省の寝たきり度にもとづき「ランクA(準寝たきり)」の者とし,日常生活動作(ADL)能力は36点を満点として15.24点(平均17.4点)であった.下肢筋力を評価する指標として,虚弱高齢者でも十分実施可能な30秒椅子立ち上がりテストを用いた.その結果,虚弱高齢者の成績は7.2±1.7回で,自立高齢者は14.4±3.4回であり,虚弱高齢者の能力は自立高齢者の半分程度であった.次に,歩行能力については,椅子から立ち上がって目標物をまわり,再び座る時間で評価するテスト(Timed Up and Go)をおこなわせた結果,虚弱高齢者は14.1±3.2秒で,自立高齢者は6.7±1.3秒で自立高齢者の47.5%であった.また,踵骨の音響的骨強度(OSI)は虚弱高齢者が2.077±0.26(*10^6)で,自立高齢者は2.375±0.29(*10^6)と12.5%有意に低い値を示した.以上のことから,虚弱高齢者の踵骨の音響的骨強度には大きな低下は認められないものの,日常生活動作に必要な下肢の筋力や歩行能力の低下が顕著に認められた.これらの結果から,次年度は下肢筋の組織厚と直接的な筋力の評価を加え,虚弱高齢者の対するトレーニング,脱トレーニング,再トレーニングの影響を検討し,神経.筋記憶に関する知見を得る目的である
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