研究概要 |
昨年度の研究において、加齢による動脈コンプライアンスの変化に筋力トレーニングが及ぼす影響を横断的手法により明らかにした。筋力トレーニング経験のない青年および中高年被験者34名と、ウエイトリフティングおよびパワーリフティングクラブ所属の青年および中高齢メンバー28名を被験者とし、循環器病の独立したリスクファクターである、左心室形態、頚動脈コンプライアンス、脈波速度による全身の動脈コンプライアンスを測定し、比較した。その結果、1)筋力トレーニングが加齢による中心動脈コンプライアンスの低下を促進すること、2)この中心動脈コンプライアンスの低下は求心性左心室肥大と関連することが示唆された。以上の知見は、持久的トレーニングが中心動脈コンプライアンスを増加させるという好ましい効果とは対照的であった。さらに本年度は、24名の青年を対象にして無作為割り付け,介入実験により筋力トレーニングが動脈コンプライアンスに及ぼす影響を検討した。その結果、1)4ヶ月の筋力トレーニングにより動脈コンプライアンスが低下すること、2)このコンプライアンス低下は4ヶ月の脱トレーニングにより筋トレ前のベースライン値に回復することが明らかとなった。今後、健康増進を目的とした筋力トレーニングの遂行のための適切なガイドラインを策定するためには、筋力トレーニングが様々なリスクファクターにどのような影響を及ぼすかについてより包括的なエビデンスを確立することが必要である。
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