研究概要 |
研究テーマ:両側同時掌握運動が活動筋の酸素消費に及ぼす影響 【目的】両側同時脚伸展時における肺胞レベルでの酸素消費量は、一側伸展時に得られた値の2倍には達しない。こうした背景には、心拍数や心拍出量などの循環系応答が活動筋量の増加に一致しないことが原因とされている。一方、掌握運動時における活動筋の動脈血流量や交換神経活動といった局所応答も、中心循環と同様に必ずしも算術的加算にはならないことから、何らかの抑制機構の存在が考えられている。例えば、掌握運動時の筋交換神経活動は右側(左半球)優位であるとの報告から、こうした現象には大脳半球の機能的な差異が関係する可能性が示唆されている。そこで本研究では、両側同時運動により、一側時と比較して活動筋酸素消費において生ずる変化について検討することを目的とした。 【方法】被験者は健康な成人男性5名であった。被験者は上肢がハンドグリップエルゴメータ上で肩の高さになるように椅子に座り、両側同時および一側単独に掌握運動を行った。掌握運動は10,20および30%MVCに相当する錘を4秒に一回、2cm持ち上げるものとした。各負荷での運動は3分間行い、運動終了後に3分間の休息を挟みながら30%MVCまで連続して行った。各負荷における運動終了直後より30秒間、300mmHg以上の圧で両腕上腕部の動脈血流遮断を行い、前腕屈筋群の酸素動態(Oxy-Hb/Mb)を近赤外分光測定装置(NIRS : HEO-210、OMRON)を用いて測定した。測定した(Oxy-Hb/Mb)の低下率から筋の運動時酸素消費(Vo2)を算出し、安静時酸素消費に対する倍率で示した。また、同筋群より表面電極法によりEMGを導出し、運動開始から1秒間のiEMGを算出した。 【結果】両側同時掌握運動時の負荷増加に対するVo2増加率は左右で同様となる傾向にあった。しかし、両側同時運動時の右腕において、Vo2とiEMGの変化率(Vo2/iEMG)が他の運動時より高まる傾向にあった。 【考察】両側同時運動における右腕のVo2増加率は、一側による先行研究の結果とほぼ一致していた。両側同時運動時の右腕において、Vo2/iEMGが他の運動時より高まる原因として、両側同時運動による活動筋量の増加によりFT線維動員の低下および大脳半球からの運動指令出力の低下が推察された。
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