研究概要 |
平成13年度は国内においては,埼玉県吉川市と茨城県水戸市,また海外では,東南アジア(インドネシア,マレーシア)およびスペインにおいて,自然環境と信仰との関わりをテーマとする資料収集・現地調査を行った。本年度の成果のうち,埼玉県吉川市の調査より明らかになった点は以下の通りである。 金村別雷神社・第二次信仰圏に相当する吉川市には,明治期以前に起源を有する相対的に古い時期に組織された講が分布している。金村講の地域的性格として,氏子組織や他の社寺参詣組織から自立した,独自の宗教組織を形成している点を指摘することができる。このことは,1)世話人の継続性と自立性(世襲制による世話人により講運営がなされ,かつ金村講独自の世話人を有していること),2)構成員の独立と代参制度の確立(他の宗教組織とは構成員を異にし,参拝の際には講員による輪番制で代参されていること),3)講行事の存在(結び講や勘定講といった講としての行事が営まれている)ことから明らかにされる。 第二次信仰圏における金村信仰は,在地の産土神や鎮守神とは異なる遠来の利益神として地域に受容されている。金村別雷神社と集落とは,雷神に由来する御利益を核として結合している。降雨祈願や雹虫除けの事象に顕著なように,金村別雷神社の有する御利益は集落の共同祈願の対象である。したがって第二次信仰圏の範囲では,共同祈願を目的とする代参講によって,地域と金村別雷神社は結合される。一方で個人崇敬者による参拝は少数である。住民の参拝行動にも金村別雷神社は選択されていないことからも,金村別雷神社が鎮守神ではなく利益神として信仰されていることが明白である。また同時に,第二次信仰圏の地域において,金村別雷神社は一日余暇圏に位置し,参拝そのものを目的とする講員全体による総参型の講も存立することが明らかとなった。
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