研究概要 |
本年度の研究では,東京大都市圏郊外において女性が中断・再就職型の職業経歴をたどる要因を労働市場の構造に求め,郊外居住世帯の結婚にともなう職住関係の変化から考察するとともに,大都市圏におけるそうした女性の就業パターンの位置づけを家父長制と関連づけて議論した.まず東京大都市圏における女性の雇用機会の分布を検討すると,都区部ではフルタイム雇用が,郊外ではパートタイム雇用が卓越し,それぞれ若年女性,中高年女性に割り振られており,労働市場が性別と年齢および空間によって分断されていた.次に先に行ったアンケート調査の結果から結婚前後の職住関係の変化を考察し,結婚にともなう移動自体が妻の退職や就業地の変化に結びつくケースが多いことが明らかになった.また結婚後に東京大都市圏において共働きを継続した世帯では,妻・夫ともに郊外から都区部に通勤する世帯が多い.このようなパターンになる要因は,都区部にフルタイム雇用が集中しているためである.こうした世帯の妻はその後退職し,郊外の自宅周辺で就業するようになるが,その変化の過程で妻の職業経歴に空白が生じ,郊外におけるM字型の年齢別就業率の形成に影響している.さらに郊外のパートタイム雇用は,こうした結婚後いったん退職した女性によって担われている.この女性就業のパターンは,東京大都市圏郊外において生産活動と再生産活動を維持するために必要なものであり,家父長制がそこでの調整様式として機能していると見なすことができる.
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