本研究では、次の点を明らかにした。 (1)大都市圏郊外における結婚に伴う職住関係の変化 ここでは、東京大都市圏郊外において女性が中断・再就職型の職業経歴をたどる要因を労働市場の構造に求め、郊外居住世帯の結婚にともなう職住関係の変化から考察するとともに、大都市圏におけるそうした女性の就業パターンの位置づけを家父長制と関連づけて議論した.まず東京大都市圏における女性の雇用機会の分布を検討すると、都区部ではフルタイム雇用が、郊外ではパートタイム雇用が卓越し、それぞれ若年女性、中高年女性に割り振られており、労働市場が性別と年齢および空間によって分断されていた.このことが郊外における女性のM字型の年齢別就業率の形成に影響している.この女性就業のパターンは、東京大都市圏郊外において生産活動と再生産活動を維持するために必要なものであり、家父長制がそこでの調整様式として機能していると見なすことができる。 (2)東京大都市圏における通勤流動の変化 90年代に入って東京大都市圏の通勤パターンにこれまでにない変化が起こっていることを明らかにした。すなわち、郊外から東京都区部への通勤者の減少である。その要因としては、定年退職する都区部通勤者が増加したこと、若年者の都区部指向率が低下したこと、東京から郊外への人口移動が減少したこと、不況に伴う失業者の増加、非正規雇用の増加などがあげられる。
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