本研究では、市町村立や第三セクター方式よる福祉施設の立地が多い石川県において、従来からの公的部門である社会福祉協議会(社協)の役割も大きい奥能登地方の穴水町を事例として、訪問介護サービスに関する供給と利用の両面について検討した。 石川県では、白山麓の4村を除く全市町村に訪問介護事業者が立地している。事業者の種別(一般の社会福祉法人、社協、市町村直営、医療法人、営利法人、非営利法人、農協、その他)に立地状況を見ると、最も数が多いのは営利法人であるが、その立地は金沢市とその近隣および市部に偏在し、穴水町を含む能登北部には階無である。町村部のにおける最も主要な法人種別は社協である。とくに能登地方の町村部では社協のみが立地する場合が目立ち、その他でもこれに社会福祉法人もしく農協を加えた町村がほとんどである。 穴水町では、町社協、社会福祉法人、農協による3事業者が立地しており、絶対的なサービス量(金額、回数、利用者実人員)だけでなく、利用者実人員当たりの利用回数や利用金額に関しても、社会福祉協議会が他の2事業者を上回っている。社協は介護保険以前の1999年度にすでに町から事業委託を受けていたことや、町立のデイサービス、ショートステイ、老人保健施設など同一施設内に立地し、社協のみならず町のケアマネージャを通したケアプラン作成における事業者の紹介段階で有利な立場にあると考えられる。他の2事業者はそうした有利性を持たないが、社会福祉法人は特別養護老人ホーム、デイサービス、ショートステイといった他のサービス実績を通してより多くの高齢者との接点を有する点で、農協に対して相対的な優位性を持っていると言える。農協を母体とする事業者は{隣接する能都町にも進出しているものの、参入時期が遅いことや、他に居宅介護支援事業(ケアプラン作成)を行うのみであることから、事業効率は低いことがわかった。
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