本研究は日本と韓国における国土開発の類似性と異なる結果に着目し、(1)両国の戦後国土開発を開発パラダイムの観点から比較・検討し、類似点と相違点を明らかにするとともに、(2)「折衷型開発パラダイム」への転換後の結果の違いを、実行計画への反映と実際の財政配分および地方行政の役割といった3つの側面から比較・検討し、「折衷型開発パラダイム」の可能性と限界を明らかにするものである。 以上のような研究目的を鑑み、今年度は日本と韓国における国土開発計画の策定過程に用いられた資料を収集し、両国の国土開発計画に現れる類似点と相違点を比較・分析した。日本における第一・二次全国総合開発計画に掲げられている開発目標や下位項目が、韓国の第1次国土総合開発計画のそれと酷似しており、日本において第三次全国総合開発計画で「定住圏」が開発の基本理念として登場したことと相まって、韓国の第2次国土総合開発計画においても「地方定住生活圏」「広域開発圏」が開発の上位目標となっていた。さらに、韓国の国土総合開発計画は、その後、1990年代の地方分散型開発戦略(第3次)を経て、2000年から実施されている第4次国土総合計画では「21世紀統合国土」を基本理念に「均衡国土」「緑色国土」「開放国土」「統一国土」といった4つの目標を掲げている。このような韓国の国土開発における基本理念の旋回は韓国自身の経済成長に伴う地域問題を解決するための必然的な結果であろうが、地理的に近い日本の国土開発における方向転換と深い関連がある。今回の調査のなかで韓国の国土開発計画の試案を作成する(韓国)国土開発研究院の研究員に対する聞き取り調査を行ったが、当研究院で日本の事例をもっとも参考にしていることがわかった。しかし、韓国の第4次国土総合計画には環境に対する配慮や周辺国とのネットワーク構築が強調されている点が四全総以降の日本の開発計画と異なっている。また、過疎地をはじめとする農村部の位置づけに関しては、日本の方が手厚い対策を講じられている。
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