研究概要 |
本研究では19世紀日本において,江戸幕府・松前藩など当時の政治的権力が日本の北方地域をどのように情報構築し,その情報を利用したのかを明らかにすることを目的としている。今年度は主に「蝦夷地」を対象とした地図作製のあり方を考察するために,関連文献の収集および各地の史料保存機関において絵図・地図の閲覧・撮影を行なった。また絵図・地図だけでなく同時期における関連の地誌書も調査し,可能ならば複写を行なった。その結果,19世紀半ば(幕末期)において,政治的権力による「日本」という国家の領域確定,その領土としての「北海道」の創出が行われたこと,その手段として北方地域の情報収集,地図作製が行われたことを明らかにした。これは,「北海道」が所与のものではなく創り出された空間であるということである。この問題については,さらに,北の大国ロシアとの関係そしてアイヌの人々との関係を検討していく必要があろう。
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