経済的中枢管理機能の発現主体として、また都市成長の最も重要な要素の一つとして、1960年代以降、オフィス機能に関する研究が進められてきた。しかし、バブル経済崩壊後の1990年代の景気低迷下では、企業の管理・運営部門での合理化が進められている。一企業内にとどまらない、合併・買収をもともないながらのオフィス機能の再編は、これまで明らかにされてきた企業のオフィス配置に大きな変動をもたらし、ひいては都市成長の差異にもつながる。そこで、(1)拡大基調ではない成熟化段階を迎えた日本企業がどのような目的・方法でオフィスの空間的な再編成を行っているのか、(2)さらに、オフィスの統廃合による集約化が、従業員や取引先企業、さらに地域経済や都市構造にどのような影響を与えるのか、を明らかにする。 本年度は、特に、総合スーパーやコンビニエンスストア、家電量販チェーンなどの大手小売企業を対象として調査を行った。明らかになった主な点は以下のように整理できる。 1.大手小売企業において管理・運営部門の合理化が行われており、間接部門のスリム化が進められている。 2.合理化の一環としての本社移転、グループ企業本社の集約が行われることがある。その際には、大都市都心部の利便性よりもコスト削減が優先されることがある。それにより取引先や従業員に不便を強いることがあるが、なるべく少なくなるような努力がなされている。 3.大手企業同士の経営統合が行われることがあり、共同持株会社の所在地については、両社の展開地域や主導権とは別の論理で、本社所在地が選択されることがある。これはさらなる東京一極集中をもたらす可能性がある。 なお、本年度の研究成果については、アメリカ地理学会2002年学術大会(2002年3月20日、ロサンゼルス)、および日本地理学会2002年度春季学術大会(2002年3月31日)において発表予定である。
|