経済的中枢管理機能の発現主体として、また都市成長の最も重要な要素の一つとして、1960年代以降、オフィス機能に関する研究が進められてきた。しかし、バブル経済崩壊後の1990年代の景気低迷下では、企業の管理・運営部門での合理化が進められている。一企業内にとどまらない、合併・買収をもともないながらのオフィス機能の再編は、これまで明らかにされてきた企業のオフィス配置に大きな変動をもたらし、ひいては都市成長の差異にもつながる。そこで、(1)拡大基調ではない成熟化段階を迎えた日本企業がどのような目的・方法でオフィスの空間的な再編成を行っているのか、(2)さらに、オフィスの統廃合による集約化が、従業員や取引先企業、さらに地域経済や都市構造にどのような影響を与えるのか、を明らかにする。 本年度は、前年度の引き続き大手小売企業に関する調査をおこなった他、金融機関の支店統廃合に関する分析もおこなった。 まず、前者については、大手小売企業同士が共同持株会社を設立して経営統合をおこなう場合、事業会社の独自性を維持するか、あるいは合併に近い形態にしていくかによって、地域に対する影響が異なることが明らかとなった。 後者については、東海地方に立地する都市銀行の店舗配置と従業員数の変化を検討した結果、店舗閉鎖はそれほど急速には進んでいないものの、従業員数では1995年から2002年までの7年間で30%以上減少した。これは金融機関における雇用減少を示すだけではなく、都銀の店舗は、それぞれの都市において都心地域に立地することが多いことを考えると、都心商業機能に与える影響も大きいと考える必要がある。
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