回帰モデルを代表とする統計モデルを空間的に拡張する場合、従来は観測の空間的従属性を問題として空間回帰モデルが提案されてきた。これに対し近年では、空間的異質性すなわち、確率的過程の空間的な位置による違いを検出する方法論が、重要な研究課題となっている。その中でも、地理的加重回帰法GWR(Geographically Weighted Regreesion)は、先見的な条件をできる限り少なく抑え、効率よくパラメターの空間的変異を検出する技法として有用である。本研究の目的は、このGWRの方法論を空間的な流動を扱うモデリングに拡張し、経験的なデータによりその有効性を確かめることにある。さらに、本研究では、(1)空間的流動を扱うモデル-空間的相互作用モデル-を直接適用する場合として、発生制約型の空間的相互作」用モデルを、(2)Gravity型の空間的相互作用モデルをサブモデルとして、いわば空間的相互作用モデルを間接的に利用する場合として、空間的拡散モデルをとりあげ、GWRの方法論を検討した。 空間的拡散現象に関しては、日本におけるAIDSの空間的拡散を事例として、都道府県別報告者数の時系列推移をモデル化・予測を行った。AIDS感染の空間的移動(居住地と感染地の関係)は不明のため、Gravity型モデルによりその関係をモデル化し、モデルに必要なパラメターをGWRを利用して推定した。適合状況は良好であり、その概要を国際学会ASIA GIS 2001にて報告した。 空間的流動現象に関しては、日本における市区町村間人口移動を事例として、これにGWRを適用する方法論を整理した。空間的相互作用モデルの場合、空間的な次元は発地と着地がそれぞれ2次元座標をもつ関係で、合計4次元となってしまい、分析が高度に複雑化するため、その結果を整理し視覚化する手法を検討した。
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