本研究は、インターネット上の情報倫理に関するひとびとの意識・行動の実態を明らかにするとともに、その要因として現実社会における日常倫理、共感性などを説明変数とし関連性を探り、良好な状態を目指しての具体的な提言を試みることを目的としている。日本とインターネット先進国であるアメリカとの比較研究として、両国において同じ質問紙に基づく調査を行う。具体的な手続きは(1)分析モデルの検討、(2)モデルの妥当性の確認、(3)実証、(4)分析と考察、(5)まとめ(報告書作成)となる。 平成13年度には、12年7月に本人がプリテストとして実施した日本の大学生を対象とする質問紙調査の素データの分析および文献考察を踏まえた理論研究により、上記(1)と(2)を中心に行った。その結果、以下のことを導いた。 1.ひとりの生活主体は同時に現実社会と仮想社会のサブシステムとなる。2つの社会の間には匿名性、非対面的コミュニケーションの程度の違いがあるが、外的サンクションを内面化し、また共感性と良心を獲得するプロセスにおいて、現実社会での日常モラルと仮想社会での情報倫理は連動している。 2.インターネットにおける情報倫理について、意識と行為とのギャップがめだつ。これは、何が道徳的で何が非道徳的かをよく理解しながらも、状況や条件および自己利益を合理的に勘案しつつ時として道徳的でない行為を選択する合理的エゴイスト傾向が作用していると予想される。匿名性と非対面性の高い仮想社会では、この性質が顕在化しやすいと考えられるからである。 以上の知見について、プリテストおよび理論研究から得られた結果として国際会議等で発表しながら、これらを仮説としてモデルを完成させた。引き続き、実証のため調査をすすめている。
|