初年度のアンケート調査において、生活時間におけるゆとりを指す時間的拘束が、意外にも出生児数規定要因となっているという知見を得た。加えて近年のように完結出生児数が2〜3人の場合、出生行動の特徴が子ども数よりも出生タイミングの側面に強く現れることに着目して、インタビュー調査を実施した。そして、出産の意志決定にともなう葛藤を最小限にとどめ、予定するだけの子どもを産み育てやすい育児環境の構築を目指しつつ、今回は今後の量的実証研究に向けての調査仮説の生成を主目的とした。 調査は2002年7月〜8月に近畿地区にて、既婚の30代の女性8人を対象として行った。インタビュー内容を検討すると、親は出産前から時間的拘束を覚悟しようと心がけていたが、育児は予想以上に思い通りにいかず、とくに乳幼児の睡眠リズムが定着するまでは時間的に拘束されやすいことが指摘された。そのなかで自分の時間を確保して心のゆとりを保つか、睡眠時間を確保して体力をを維持するかについてバランスよく選択する必要が生じるようであった。この状況は、昨年度の調査において時間的拘束が心理的あるいは体力的負担感と連動していたメカニズムの一端を説明するものといえる。 出生タイミングは結婚年齢が高いまたは出産後に再就職を希望している場合、急がれていた。平均的年齢で結婚していた場合は、結婚、仕事上の目標の達成、労働環境の制約要因の解消の後約2年目に第1子を産み、3歳差で第2子を産むパターンがみられた。子育て支援策の拡充は出産の意思決定にともなうを葛藤要因を解消し、とくに第1子出生タイミングの遅延化を防ぐ可能性が示唆された。予定子ども数を産むかどうかという葛藤においては、プライベートな育児環境の影響による大きさが指摘された。全体的に子どは「2人でいい」という2人っ子規範に依拠した暫定的な満足感が観察された2人っ子規範は、子ども数1人の親にはもう1人産むことを考えさせる一方で、子ども数2人の親には3人目がはたして必要かということを考えさせるように作用することが示された。しかし、本調査対象者のうち2名は子どもは1人でもいいと回答しており、2人っ子規範の拘束力が弱まってきた可能性は否めない。
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