研究概要 |
力学的性質が複雑な食品を調べるためのモデルとして、多糖類やタンパク質の物理化学的性質から得られる情報は重要である。そこで、生分解性を示す比較的安価な多糖類で世界的にシェアをみる澱粉に注目し、その諸物性の基礎的データーを得た。加工澱粉は老化抑制効果が注目されており、中でも湿熱処理澱粉は、化学変化を伴わずに、熱と水だけで物理的処理を施すことから、安全性の面からも食品をはじめとする様々な分野で高度な利用が期待されている。そこで、馬鈴薯とトウモロコシ澱粉の諸物性に及ぼす湿熱処理の影響を詳細に比較検討した。 民族性とテクスチャーの関係性を調べる官能検査は2種類実施した。1つ目の調査は、日頃からなじみ深い10種類の食品試料(米飯,煎餅,うどん,マシュマロ,豆腐,納豆,コンニャク,マヨネーズ,チョコレート,ポテトチッブス)を本学に設置された25カ国語の各言語のネイティブスピーカーに食してもらい、それぞれ感じたテクスチャー表現を母国語で描写してもらった。それぞれの食品テクスチャー表現は可能な限り「おいしさ」と「まずさ」に分けた表現を記載してもらった。2つ目の調査はゲル化剤の異なる4種類のゼリー状食品(カラギーナンゼリー,コンニャクゼリー,寒天ゼリー,グミ)を中国人、韓国人、ベトナム人、日本人それぞれ25人に食してもらい、3つの場面(手で触れたとき,口の中に入れた瞬間,噛み砕いたとき)に感じる硬さの順位付けとその時のテクスチャー表現を母国語で記載してもらった。またこれら4種類の試料は破断測定も行い、力学測定により得られた客観値と官能検査による主観値との対応をはかった。この2種類の調査は只今分析中であるが、言語体系や食文化の相違および類似性を反映した非常に興味深い結果が得られているため、さらなる追調査により、結果を深めたいと思う。
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