糖尿病の危険因子には過食、肥満、運動不足などが挙げられ、個々の身体状況や生活状況を適確に把握し、個人に見合った指導をすることが重要である。本研究では日常生活活動や食習慣が大きく影響すると考えられる安静エネルギー代謝量を測定し、あわせて体組成や食事、運動、年齢との関連について検討した。 平成13年度から平成14年度にかけて総社市健康増進課の協力により、地域住民40代から80代の女性99人対象に簡易エネルギー代謝測定装置を用いた安静時エネルギー代謝量、食事状況、運動状況、身体計測および体脂肪を測定した。また20代女性では運動習慣の有無に分け(運動群17人、非運動群24人)比較検討した。血液生化学検査値は次年度の検討とした。 安静時エネルギー代謝量を年代別に比較した結果、20代平均にくらべて60代が最も高値を示し、さらに高齢では低い傾向が認められた。60代は摂取エネルギーも多く、体脂肪率も高い集団だった。安静時エネルギー代謝量の年間変動では冬期において低下する傾向であった。体組成においては体重の変動はなく、体脂肪率は冬期に上昇した。一方、若年女性の運動の有無で比較すると運動群が有為な高値を示した。身体測定の結果では運動群と非運動群で体格に差はなかったが非運動群は体脂肪量が多かった。今回の測定では安静時エネルギー代謝量は加齢に伴う低下はみられず、現在の運動習慣が影響していると考えられた。安静時エネルギー代謝量の測定は運動状態の一指標として有効とは推察されるものの、中高年女性では体脂肪など運動以外の因子も存在すると考えられ、過去の運動歴などの検討がさらに必要と考えられた。若年者においてはこのような指標をもちいて運動習慣を中心として正しい食生活を身に付けることへの動機づけを行うことは糖尿病などの生活習慣病予防に有用であろうと期待され、今後さらに検討すべきである。
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