メカブはワカメの成実葉で粘りに富むことが特徴である。メカブに水を加えて攪拌すると得られる粘り(メカブ粘性物質)には難消化性多糖のアルギン酸が溶出し、その粘性に関与している。難消化性多糖の生理作用には粘性が大きな役割を果たしていることから、13年度においてはメカブ粘性物質の粘度が作用部位である消化管内でどのように変化するのか、人工消化実験と腸内細菌を用いたバッチ培養により検討した。その結果、粘性物質は膵液酵素や腸内細菌による分解をほとんど受けず、消化管内で高い粘度を保っていることが推定された。そこで、14年度においては動物実験により、粘性物質の粘度が生体内でどのように変化するのか、また、栄養素の消化吸収や消化管組織などに与える影響を明らかにすることを目的とした。 異なる温度で調製したメカブ粘性物質を添加することによって、粘度の異なる飼料を調製し、ラットに35日間自由摂取させた。高温で調製した粘度の高い粘性物質を摂取したラットの胃と盲腸の内容物の粘度は対照群に比べて有意に高かったが、小腸内容物の粘度には差がなく、昨年度の人工消化実験とは異なる結果であった。さらに、栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)の消化吸収率や血中脂質濃度にも粘性物質摂取の影響は認められなかった。盲腸においては組織重量、内容物重量ともに粘性物質を摂取することにより増加した。腸内細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸を測定した結果、粘性物質の摂取により盲腸内容物中の酢酸濃度は低下、酪酸濃度は上昇していた。これらの結果より、メカブ粘性物質の摂取によって小腸内容物の粘度は変化せず、栄養素の消化吸収には影響しないが、盲腸内発酵には影響を及ぼす可能性を示唆することができた。
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