本研究は、食品成分の免疫調節能を、食品中の成分含量に基づく機能性評価だけでなく、調理、食品の組み合わせ、腸管吸収といった食材が体内に取り込まれるまでの過程をふまえた評価系を、Caco-2細胞(腸管上皮細胞モデル)-THP-1細胞(免疫担当細胞モデル)複合培養系を用いることによって確立することを目的としている。本年度は、主に試料の調製方法と調理操作が食品の免疫調節機能に及ぼす影響について検討した。 まず、試料は、食物因子が摂食後から小腸上皮細胞に到着するまでの過程に対応するように調製した。すなわち、食品を砕断後、ペプシン消化し、さらにパンクレアチン/胆汁消化を行った。しかし、このまま培養細胞に添加すると、試料中に存在する消化酵素の細胞に対する影響が懸念される。そこで、パンクレアチン/胆汁消化を、分子量15000で分画可能な透析膜内で行った。透析外液を無血清培地とし、消化終了後、この透析外液をフィルター滅菌し、血清添加して細胞に与えた。現在、この方法で調製した試料を、Caco-2単独培養に添加し、Caco-2細胞からのTGF-βとIL-7の分泌量を測定中である。 一方、食品を調理することによって、元の食品の有した免疫調節機能がどのように変化するかを、THP-1単独培養系を用いて検討した。今年度は、食物が摂取されるまでの変化を検討することとし、野菜から水抽出液を調製し、THP-1細胞に添加し、添加72時間後の培養上清中のIL-10、IL-12を定量した。その結果、大根(青首、聖護院)は、THP-1細胞のIL-10、IL-12分泌能を促進した。しかし、大根を加熱することによって、この分泌促進能は消失した。また、大根への調味料添加の影響を検討したところ、しょうゆを添加することによって、分泌促進能が消失した。調理操作によって、食品のもつ免疫調節能が変化することが明らかとなった。
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