本研究は、食品の免疫調節能を、調理、消化吸収といった食材が体内に取り込まれるまでの過程をふまえて評価可能な実験系を、Caco-2細胞(腸管上皮細胞モデル)-THP-1細胞(免疫担当細胞モデル)複合培養系を用いて確立することを目的する。 今年度は、野菜から昨年度考案した人工消化試料を調製し、Caco-2細胞とTHP-1細胞の単独培養に添加し、サイトカイン分泌能に及ぼす影響を検討した。 まず、試料をCaco-2単独培養に添加し、細胞からのTGF-βとIL-7の分泌量を測定した。TGF-βとIL-7は互いに拮抗する作用を有するため、野菜試料添加がTGF-βとIL-7分泌能に及ぼす影響も拮抗すると推察され、実際、キクカボチャ、エダマメ、ゴーヤには、IL-7分泌抑制作用とTGF-β分泌促進作用が認められた。しかし、青ジソ、ナス、シシトウのように両サイトカインの分泌を抑制するものもあった。また、ズッキーニについて、種々の加熱調理を施した後に人工消化試料を調製したところ、IL-7の分泌量への影響は生のものと変化が認められなかったが、TGF-βの分泌量は、油炒め加熱を施すことによって、有意に促進された。動物実験では、油脂添加食によるTGF-β分泌促進の報告があるが、炒め加熱によって食品に吸収される油脂量でその効果が認められた。 また、ゴーヤについてTHP-1細胞からのIL-10とIL-12の分泌量に及ぼす影響を検討したところ、単なるゴーヤの水抽出添加では、両方のサイトカイン分泌促進能が認められたが、人工消化することによってこの促進能が消失した。しかし、ゴーヤを加熱調理して人工消化した試料を添加すると、IL-10の分泌量のみ促進された。 今後、これらの調理済み野菜から調製した人工消化試料を、複合培養系に添加し、免疫ネットワークに及ぼす影響の検討を行う予定である。
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