熱帯果実の嗜好特性と加工適性の基礎資料を得る目的で、イメージと官能・嗜好特性の関係、熱帯果実から抽出した粗ペクチンの理化学的性質と調整したジャムの品質の関係を検討し、以下の結果を得た。 1.熱帯果実とその他の果実21試料について、16個のイメージワードに対する評点を主成分分析し、イメージマップを作成したところ、バナナ、オレンジ、ピンクグレープフルーツ、アボカド、パパイヤ、イチゴ、リンゴなどは「庶民的果実群」、キウイ、スイカ、メロン、パッションフルーツ、パイナップルなどは「日本的熱帯果実群」、フェイジョア、ライチは「熱帯イメージ先行型果実群」、キワノ、スターフルーツ、マンゴスチンは「新鮮イメージ先行型果実群」に分類された。また、官能評価では、熱帯果実は水々しいと評価され、甘味の弱い果実は嗜好性が低かった。イメージと嗜好性の関係はみられず、嗜好性に影響を与えている因子は甘味であった。 2.熱帯果実(1と同様の果実)から抽出した粗ペクチン中のガラクチュロン酸量は、50%前後のものが多く、ガラクチュロン酸に対するメトキシル基量は7%以上で高メトキシルペクチンであった。これらのペクチンは中性糖にラムノースが含まれていたため、分子鎖はねじれを持った構造であることが推察された。また、粗ペクチンの粘度を毛細管粘度計によって測定したところ、ガラクチュロン酸量が高いほど高粘度であった。いずれの試料も無機成分はKが最も多く、ついでCa、Mgの順で同様の傾向であった。無機質含有量と粘度の関係は認められなかった。マンゴー、キウイ、スターフルーツ、フェイジョア、グァバは、ペクチンや酸の添加なしに良好なジャムを調整できたが、ジャムの品質とペクチンの理化学的性質との関係は認められなかった。
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