今年度は主に以下の2つの実験を行った。 第1実験では、被験者たちに検索サイトを利用して実際に検索するよう指示し、その検索過程と検索結果に得られた知識を分析した。検索サイトで調べる概念は、(1)被験者たちに馴染み深い概念、(2)被験者たちに馴染みのない概念の2種類を用意した。実験結果から、被験者たちが馴染みのない概念に対して検索する場合には、問題文に示されていた単語をそのまま検索語として指定される傾向が見られた。それに対して、馴染みの深い概念を対象として検索する場合には、問題文に示されていた単語以外の言葉を検索語として利用する傾向が見られた、また、検索結果のページを閲覧する行動についても、検索概念によって次のような違いが見られた。馴染みの深い概念について検索した場合、検索結果リストの比較的上位のサイトにアクセスし、その後もサイトからリンクされているページを継続して閲覧し続ける傾向が高かった、これに対して、馴染みのない概念について検索した場合には、結果のページを数多くスクロールする傾向が高く、また、結果のページから他のサイトへジャンプしても、比較的短時間で元の検索結果のページに戻る傾向が高かった。 第2実験では、まず始めに、KJ法を用いて被験者たちが強く興味を持っているテーマに関する概念を整理するよう求めた。次に、各被験者は個別に検索サイトを用いて、KJ法を用いてまとめた概念について調べ学習を行うよう求めた。そして、最終的に、調べ学習によってどのような知識が得られ、どのような知識の再構成が生じたかをレポートとして提出するよう求めた。多くの被験者たちは、KJ法によってターゲット概念について知識が深められたと感じ、更に、調べ学習によって概念地図に不足していた知識が新たに付け加えられたと評価していた。しかしながら、新たに付け加えられたという知識の種類を詳しく分析した結果、概念地図の枠組み自体を再構成するような知識が得られたケースはかなり少数であったことが示された。
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