本年度の研究では、日本のメディアリテラシー教育に歴史的に特徴として見られるメディア制作活動と最近になって概念に導入された批評する活動の関係に関するモデル化を行った。 特に、日本民間放送協会と東京大学大学院情報学環MELL Projectで行われた実践を中心にモデル化と分析を行った。「民放連プロジェクト」は、送り手と受け手が放送メディアを学び合う、新しい場を地域社会の中に作っていくことを目的としている。 今年は、長野県と愛知県でパイロット研究を進めた。長野県は、テレビ信州と同県でメディアリテラシー教育を推進している林直哉・梓川高校教諭を中心とする各地の中学、高校で共同研究を行っている。愛知県は、東海テレビ放送と清水宣隆教諭をはじめとする私立春日丘中学・高校で実践が行われた。 長野では、テレビ信州報道部の人々が各地の学校に出向いて、いわば「一日出前ワークショップ」を行う。学校側では、先生やリーダー格の生徒を中心に前もって撮影などの準備をし、この日のワークショップのあいだに局の人間と意見交換をしながら、学校を舞台とした数分間のビデオを編集する。その映像は数日後、テレビ信州の夕方ニュースの中で紹介された。 一方、愛知では、生徒たちがチームを作って番組を企画、立案し、編成や営業の論理も学びながら、番組制作をしていく。そのプロセスを東海テレビのスタッフがサポートし、やはり最終的には夕方ニュースなどの枠でオンエアーをした。 今年の研究では、長野の実践を、メディア・リテラシーに取り組むリーダー(学校教師、子供たちのリーダーなど)を養成するためのプランとして、愛知のものを地域に根ざした活動を定着させるためのプランとして、それぞれ位置づけて、モデル化を行った。
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