教育をコミュニケーションによる情報伝達ととらえた場合、学習環境の拡張や変化により、従来の教育方法だけでは解決できない問題が発生する。新しい学習環境においてもより効果的な、かつ効率的なコミュニケーションを成立させるためのシステムを開発した。 まず、学習環境に関する理論を整理し、研究の枠組みとしてブロンフェンブレンナーの「生態学的学習環境モデル」を採用した。このモデルは異なるレベルのシステムから直接的、または間接的に影響を受け、相互に作用する子どもたちとその学習環境を示したものである。また、学習環境と発達する子どもたちを示すこのモデルを実装するために、大阪府S市立中学をフィールドとし、協働で進路学習および総合学習の実践を行い、記録を分析した。 また、開発した情報共有サーバを利用するためのアプリケーションを開発し、東京大学、富山大学、金沢大学、メディア教育開発センターに配布し、大阪大学に設置した情報共有サーバとの通信実験を行った・実験ポイントとなる地点に置かれた端末には、映像、音声、文字などの情報が格納され、開発したアプリケーションを利用すると、ユーザの希望や興味・関心により、情報共有サーバが各端末から情報を収集、再構築し、ユーザに提供することになる。 この通信実験を遠隔教育と想定すると、学習者は興味・関心や問題意識に沿った情報を収集することができ、また教授者は、学習者のレベルや学習内容に応じた教材を情報として提供することができることが明らかになった。 また、動画像については、映像によるコミュニケーション成立の基礎となっている「映像文法」について、文献を整理し、近年の技術進歩による、映像制作の変化について専門家にインタビューを行い、明らかにした。
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