今年度は、発表者、聴衆ともに聴覚障害者という演習場面において、提示物と講演者の位置関係と視線、見易さについての調査を行った.提示装置としては次の装置を用いた. ●マルチメディアボード(40インチ、手書き入力可能なプラズマディスプレイ) ●タッチ式プラズマディスプレイ(50インチ、手書き入力可能なプラズマディスプレイ) ●マルチメディア・プロジェクター(100インチ、コンピュータを接続) この結果、次のことがわかった. ●発表者と提示物全体が視野角が約25度以内におさまっている場合には、発表者の手話・口形を用意に読み取ることが可能である. ●発表者と提示物全体が視野角30度を超えた場合には、聴衆は視線を左右させながら、発表者と提示物を見ることになり、発表者の手話・口形の読み取りが困難な場合が生じる. ●50インチタッチ式プラズマディスプレイでは横幅が約1mであるため、すぐ脇に人が立って説明を行えば、最前列(距離3m)の学生でも手話を読み取ることが可能である。 ●100インチプロジェクターの場合には、横幅が約2mあるために、視線を動かさずに提示物と手話・口形を読み取るためには、教室の最後列(距離5m)まではなれる必要がある。 今回の結果からは、提示物と手話・口形を読むために、視野角25度以内に情報を集中させる必要があることがわかる.これは中心視の範囲と推測される. 聴覚障害者に対する教育では、聴覚情報を補うために多数の視覚情報を用いることが多いが、今回の研究からは視野角を考慮した情報提示が必要であると考えれる.
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