前年度の研究成果を受け、表示デバイスとしての適用性がより高かった透過型HMDを用いた開放型情報提示装置の実用性について検討を行った。 室内での講義の聴講における情報保障での使用においては、聴覚障害者への高等教育を実践している筑波技術短期大学における実際の講義での利用を想定し、比較的少人数(5-10名)の学生と教官との講義中のインタラクションにおける情報保障の可能性について検討した。提示する情報としては、手話通訳のリアルタイム動画像と、PC要約筆記による文字情報を用いた。いずれのケースも、被験者の意識は提示された情報の取得に集中してしまい、本来の情報へのアクセスが阻害され、情報「保障」としては問題が残る結果となった。これは表示デバイスの有効視野角の狭さに起因するものと考えられる。このデバイスの利用を前提条件にする場合、言語のような高次の情報ではなく、音の発生(クラクションや人間の呼びかけ)における音源の方向の指示などのより直感的な情報の提供が適切であるという結論を得た。 システム構成に関しては、電源部およびネットワーク部の改良を行った。無線LANの導入により、端末が完全に自立し、ワイヤレスで運用が可能になった。これにより、講義室のような限定された環境ではなく、より日常的な環境における本装置の利用が可能となった。 また、前年度の研究成果である「透過型HMDを用いた聴覚障害学生への情報保障の基礎的検討」について、オーストリア国リンツ市で開催された「特別な配慮が必要な障害者に対する計算機による支援に関する国際学会ICCHP2002」にて発表した。
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