研究概要 |
近年,デジタル技術の進展に伴い,大量の情報を高速に処理できるようになったことから,テレビ電話やテレビ会議システムなどの長距離通信の実用化が本格化している.これらのシステムを介して,円滑なコミュニケーションを図るうえで,表情や顔色による情動提示や情動評価は非常に重要である.とくに情動変動に伴う顔色が擬人化エージェントなどの基本感情を表現するための顔表情合成に利用できれば,コンピュータと人間との円滑なコミュニケーションの一役を担うことが期待される.また,顔色は日常的な診断に用いられていることから,今後,照明環境を考慮して,ネットワーク技術を利用した在宅医療や遠隔医療など,顔色の情報処理の重要性も一段と増すことが考えられる. 本研究では,自律神経活動の影響を血管収縮拡大による皮膚温度の変化としてとらえた顔面皮膚温の変化と,顔色の変化を同時計測することで,情動変動に基づく顔色の変化を顔面皮膚温の生理指標から明らかにした.また,代表的な快情動である笑いに着目し,顔面皮膚温を情動を評価する生理指標として,コミュニケーションにおける笑いの情動下での顔色の動的変化を分析評価し,顔色の頬の色相の動的モデルを提案した.さらに,顔表情合成に動的顔色を付加したときの効果を官能検査に基づいて評価し,表情に顔色を動的に付加することがバーチャル顔画像の情動提示に有効であることを示した. 本研究で得られた結果の詳細については,ヒューマンインタフェース学会シンポジウム2001論文集にて報告し,2001年度ヒューマンインタフェース学会賞(学術奨励賞)を受賞した.また,「顔画像と顔面皮膚温の同時計測による笑いにおける顔色の動的分析」,「笑いの情動下での動的顔色と表情を伴うバーチャル顔画像合成における顔色の効果」と題して原著論文にまとめ,ヒューマンインタフェース学会論文誌に掲載された.
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