研究概要 |
本研究所において開発した,図書館の業務システム利用講習会を題材としたウェブによる分散非同期型遠隔教育システムの運用に伴う利用者の行動を分析した.その結果,システムの操作や学習内容について疑問が生じた場合の解決法に特徴が見られた.操作については,あらかじめシステムの一部としてヘルプが与えられており,内容についても,冊子体と冊子体そのままのマニュアルが用意されていた.これらを参照した者も多かったが,他の解決法として,他人に尋ねた学習者が多く見られた. このことから,学習者が疑問を解決するためには,そのための資料を固定的な教材として備えても対応は限定的にしか行えないこと,効率的な疑問の解決には人が必要であることが分かった. そこで,個別に学習を進める,上記のようなウェブ利用学習環境において,学習者間での質疑応答を支援するシステムを構築した.これは,将来社会的に遠隔学習が一般的になり,多数の個別学習者が存在する状況を想定して研究している. 質疑応答の場として,ウェブ上の電子掲示板の形式を取り,そこでのやり取りに応じてダイナミックに,また自動的に学習者グループが構成される仕組みをもつ.その結果として,各学習者から見える電子掲示板はそれぞれ異なり,その学習者の発言したスレッド(話題)や,`その学習者とやり取りの多い他の学習者の発言したスレッドが,その他のスレッドより目につきやすい位置に配置される.これは,実社会での個人の人間関係を反映したものと見ることができる.つまり,親しい者の発言は耳に入ってきやすいことに対応する.また,そのような親しい者同士では関心が似ており,従って,その学習者にとって,より関心の高いであろう発言が目に入りやすくなる. このような電子掲示板をそのインタフェースの面から実験的に評価した結果,学習者はより早く自分の疑問に関連する発言を見つけることができ,効率的に問題を解決することができた.
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