本研究は、理科実験観察活動で学習者が概念的理解の論理一貫性を築くために必要不可欠な科学的思考力、特に「確証判断能力」を中心に学習者の実態を明らかにするとともに、これらの資質育成に有効な教授支援方略を検討することを目的としている。 本年度は、昨年度に引き続いて教員養成系学部学生および小・中学生に見られる、探究過程での思考特性の分析を行うとともに、科学的思考力の育成に向けた教授支援方略などについて検討を加えた。以下に結果を示す。 1.教員養成系学部学生に見る、探究過程での思考特性の分析 昨年度講義の電気回路学習をモチーフに、学生による回路作用の確証判断の有無やその対象、結論の論理性などの特性についての分析を継続して行った。予想場面において学生は小・中学生同様の誤り判断を示したが、疑問をわかせる知的な意識高揚や、考えを検証する実験・討論活動等の提供により改善が見られ、確証判断能力を育成する機会を提供できうることが示唆された。 2.小・中学校の児童生徒に見る、探究過程での思考特性の分析 水溶液学習をモチーフに、実験課題模索期の観察における(1)観察メモ作成上の特色、(2)提示事象と関連する変数への気づきとその過程での特色、(3)溶質存在モデルと観察結果との接点の有無、(4)作業中での社会的意味構成の有無と観察への影響等について事例面接法で分析し、小・中学校児童生徒の学習履歴や認知的・社会的発達との対応について検討した。 3.科学的思考力の育成に向けた教授支援方略 (1)仮説立ての大切さに気づく、(2)実験で納得するまで試行したり、データを偏見なく見取る、(3)事実と概念的理解を結びつける論理的思考が必要であると意識する、(4)他者との話し合いで、他の見方・考え方に気づき相対的に理解する、という4要素を導入した電気回路学習を開発して本年度講義で教員養成系学部学生を対象に実践した結果、一定の教育効果を得ることができた。
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