本研究は、現代アメリカ合衆国において開発された公民的教科目のカリキュラムの分析、検討を通じて公民教育カリキュラムの構成原理を理論的に解明しようとするものである。 日本では、学習指導要領の第二次改訂以後、社会科は実質的に解体の方向へと進んでいったと言われている。その過程において公民的教科目では、政治、経済、社会、倫理といった領域ごとに系統化された知識に基づく内容編成が確定し、それらの知識の教授を通して国家・社会に対する愛情やそれらに貢献する態度の育成を重視する教育がなされてきた。しかし、現在求められるのは、国家の枠組みに囚われることなく民主主義社会の一因としての市民を育成するカリキュラムである。そのためには、公民教育を社会科公民の理念に基づいて市民的資質育成を目指すものとして位置づけ、その観点からカリキュラム構成を検討する必要がある。 先行研究の分析を導じて、公民教育カリキュラムの研究に関しては、政治教育や経済教育など個別の領域ごとにプロジェクトを取り上げ、カリキュラムの分析がなされてきていることが明らかになった。公民教育全体についてそのカリキュラム構成原理を明らかにすることは、市民育成を目指す公民教育確立のために不可欠であり、本研究では領域にとらわれず、広く公民的領域の諸プロジェクトを取り上げること必要であるとの認識に立って、資料の収集、先行研究の分析を行った。今年度については、以上のような公民教育カリキュラム研究に関する問題点を明確化することと、それに基づく資料収集、先行研究分析に重点を置いた。
|