学習者の問題意識の発生・変化・消失に注目して観察・実験のプロセスや単元全体の学習を分析した。 まず、小学校6年生「大地のでき方」の学習を対象として、そこで取り上げられている教材について児童が抱く疑問や問題意識を「不思議」というキーワードから調査し、次に各授業において児童が抱いた不思議を抽出し、その内容や学習活動(観察・実験を含む)との関係を分析した。事前調査では、アンケート用紙に「不思議なこと」を記述した児童の割合は、「火山」:97%、「化石」:81%、「石」:96%、「地層」:85%であった(n=74)。児童の不思議は、教材によって多様化する場合(火山や化石)と、同じような観点に集中する場合(地層)があった。また、岩石標本を観察させた石に関する不思議では、色、形、手触りなど五感を通して得た情報について「なぜ○○なのか」と表現したものが多く、その記述内容だけでは素朴な疑問なのか、気づきを疑問の形式で表現しただけなのかを判断することは困難であった。授業後の不思議の記述については、授業内容ごとに記述できた児童の割合が異なった。不思議なことを記述できた児童の割合が高かったのは、学校の地面の下のボーリング資料を用いた授業の最後の時間(3時間目)で、授業の内容の高まりや話し合いによる児童の相互作用が不思議の記述を誘発したのではないかと推察された。火山に関する不思議の内容について、事前調査と火山の授業後の調査の結果を比較したところ、関連性が認められる児童は15%で、記述内容がまったく異なっていた児童は44%であった(n=72)。これは児童の視点が授業内容によって焦点化されたためではないかと考えられる。単元の最後に各授業において不思議の振り返りを行ったところ、児童自身の判断では、約50%の不思議が未解決のまま残されていることがわかった。以上の結果を生かして、児童が地域の自然から多様な気づきや疑問を引き出すような「大地のつくり」の単元構想や教材開発を行い、教育現場の教師と連携して実践した。
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