研究概要 |
教育実習において授業能力の向上に関して実習効果の局かったと考えられる実習生とあまり効果の見られなかった実習生の間で,授業観察録や実習録に記述された思考内容にどのような違いがあるのかを中心に分析を行った。その結果,実習効果の高かった実習生は,他の実習生の授業について,「自分ならどのような方法を採用するか」「それはなぜか」などについての説明的記述を行うことが有意に多いことが明らかとなった。これに対し実習効果の見られなかった実習生は,他の実習生の授業を賞賛する記述が非常に多く批判的に代案を提示したり評価したりすることが少なかった。 また「音楽教師にとって重要な力量は何か」についての質問項目を設け,県内小・中学校現職教員と教育実習生から回答を得た。因子分析により,「基礎的授業スキル」「人間関係配慮」「権威性」「心がけ」「主体性支援」の5つの因子を抽出した。5つの因子の標準因子得点を校種別に比較したところ,教育実習生は,現職教員と比較したとき,基礎的授業スキルを重要視する傾向があること,最も人間関係配慮因子を重要視するのは小学校教師で,教育実習生は,この因子の重要性について3つのグループの中で最も低く評価していることなどが明らかとなった。教育実習生の実施授業について,授業を受けた中学生に授業認知評価を行わせたところ,基礎的授業スキル、人間関係配慮、心がけについて高い評価を行っている実習生は,生徒から高い授業評価を受けていた。 2年間の研究により,教育実習生の音楽授業に対する観察の視点や考え方の違いが実習効果と深い関係があることが明らかになった。今後は,実習生の信念を望ましい方向に変容させていくための支援の方法に研究の焦点を当てていく。
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