本研究は、小学生、特に11歳児を対象として行われている多文化交流プログラムを例にとり、そのプログラム参加児童の異文化意識の変化を質的また量的に研究することにより、日本の学校教育、とりわけ2002年4月から本格的に始まる公立小学校の「総合的な学習の時間」に行われる「国際理解に関する学習の一環としての外国語会話等」の学習内容及び方法に示唆を行うものである。 まず、小学校における英語教育・国際理解教育を文献研究により、国際理解、異文化理解、英語教育という観点から課題と今後の展望について議論した。具体的には学習指導要領に記述されている小学校における「英語教育」について概観し、研究指定校で行われた実践研究およびその他の小学校で行われた教育活動を考察した。これまで行われている文部科学省指定研究開発校の報告書によると、小学校で行われている教育は、各々の学校が同じ認識で取り組んでいるわけではなく異なった解釈で様々な活動が行われているが、今後、教員制度、学習内容・方法論などの諸問題を克服して、国際理解を手段とした英語教育がなされるという方向が適切ではないかと結論づけられた。 また民間団体のプログラムの実践を例にとり、児童の意識変化と活動内容について、質的研究を行なった。本プログラムは約1ヶ月の活動であるが、1ヶ月の異文化交流活動は、(1)お互いを知る(2)協力関係を築く(3)信頼関係を築く(4)平和・文化について考えるという発達段階から構成され、児童の異文化能力発達に寄与している。児童の1ヶ月の意識変化をインタビュー調査研究によっても、個人によっても意識過程は異なっているものの、最終段階では、異文化に対する感受性が高まり、文化・言語の相違性を超えて、同世代の子ども達と積極的にコミュニケーションを行ない、異文化との共生に対する意識は高まったと結論づけられた。今後本活動が公立小学校でも応用可能であるのか考察することが課題として残される。
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