本研究は、大正自由教育期に様々に展開された総合的杜会認識教科の授業改革を、具体的な資料の発掘と分析にもとづいて明らかにしようとするものである。今年度は、主な研究対象を当時の修身科の中で展開された総合的社会認識教育実践に据えて硫究を進めた。具体的には、年度を通して、関連する諸資料が豊富に保管されている東京大学教育学部附属図書館と国立教育政策研究所教育研究情報センター教育図書館を中心に、資料の発掘と収集を行った。その際に収集した資料の一部を示すと次のとおりである。 ・川本宇之介『比較綜合公民科教授の新研究』中文館書店、1925年。 ・教材王国編集部『新修身の方途と実際学習例』文化書房、1931年。 ・奈良靖規『民族理想に立つ修身教育』同文館、1933年。 ・鈴木そよ子「富士小学校の授業改造と奈良靖規の実践」東京大学教育学部教育方法学研究室『教育方法史研究』第二集、1984年、1-19頁 これらは、それぞれ大正自由教育期に修身科の枠組み内で展開された杜会認識教育実践の記録と当時の動向、そして実践者を研究対象とした先行研究の代表的なものである。 今年度は収集した資料をもとに、当時の修身科の中で実践された社会認識教育のうち、公民教育に関する授業に焦点を絞って分析を進めた。そして、平成13年10月13日に開催された全国社会科教育学会第50回全国研究大会(広島大学教育学部)において、分析結果の一部を「大正自由教育期における修身授業改革-初等教育段階の場合-」との主題で発表を行った。 また、本研究で取り扱う諸資料は、ほぼ100年近い年月の経過のために保存状態が思わしくないものが、ほとんどである。そのため、少しずつではあるが電子的な保存の試みも実施した。
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