日本人が外国人学習者の日本語音声を評価する際、学習者の母語によって評価基準が変わる可能性があるかを検証した。そのため、日本人被験者85名に、スペイン語を母語とする学習者と台湾語を母語とする学習者の発話を聞かせ、それを評価させた。発話録音の際、研究者が用意した「実験文」ではなく、学習者と研究者の会話を録音し、採録した学習者の自由発話の中から適当と思われる部分を選択して実験に利用した。その結果、総合的な日本語能力で劣るスペイン語を母語とする学習者への評価が、台湾語を母語とする学習者への評価を上回った。日本人が、様々なメディアで欧米言語を母語とする外国人の日本語を聞き慣れている影響が現れた可能性が考えられる。また、書く・読むなども含めた総合的日本語能力が高いにも関わらず、発音が悪いために「上手ではない」と評価される学習者の存在が考えられるため、今後はさらに音声指導を強化する必要がある。 また、プロソディのうちポーズに着目し、長さとポーズが評価に与える影響力についても検証した。そのために、スペイン語話者の音声を元に、音声分析器CSLを用いて、ポーズの合成音声および長さの合成音声を作成した。そして、その合成音声を上記の85名の被験者に評価させた。その結果、ポーズの影響力が長さの影響力を有意な差を持って上回るという結果を得た。長さ指導の重要性については、今更とりあげるまでもないが、今回の結果によって、今後は、長さだけでなくポーズにも重点もおいた音声指導を考えていく必要があると言える。
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