1.研究経過について 本研究はある言語の母語話者(NS)が非母語話者(NNS)への伝達を促進するために使用される言語使用域であるフォリナー・トーク(FT)を通時的にその変容を追うことでNSがFTをどのように習得・発達させていくのか、その過程を明らかにすること及び、FTの個人差を記述することを目的としている。そのため、研究の正否を左右するのは分析資料となる発話資料であることから、その収集に細心の注意と最大の努力が必要であると判断し、今年度前半は分析資料及び収集方法について先行研究を中心に検討を行い、10月より一斉に9組の発話資料収集を開始した。収集した発話資料は(1)自由会話(2)カタログ・オーダー・タスクの2種類である。そして、発話資料収集後1週間以内に両者にフォローアップ・インタビューを行った。現段階では、4ヶ月3回分の発話資料の収集が終わっており、可能である限り7月まで数回の発話資料収集を予定している。 2.研究成果について 今年度は実施計画にもあるように予備分析を行った。フォローアップ・インタビューを中心にそこから得られた知見等を以下に示したい。 ・自分がどのような話し方をしているのかについてNS及びNNSともに気が付いている人は少ない。例えば、自分では常体を使って話しているつもりが、実際には丁寧体を使用している。 ・NNSの方が総じて受身の姿勢でいることが多い。話題を提供するのはNSの方が多い。 ・NNSとの接触経験の少ないNSはNNSへ説明することが難しいようである。 ・NS被験者によってはNNSとの対話に負担を感じる。 3.来年度の研究の展開について 文字化された分析資料をもとに、特に言語面におけるFTの変容の過程を詳細に記述する。またできるだけ多くの被験者に引き続き発話資料を提供してもらえるように協力を依頼する。
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