1.研究経過 本研究は、母語話者(NS)と非母語話者(NNS)が参加する接触場面に関して、NS側からアプローチしたフォリナー・トーク(FT)の研究である。特に、本研究ではFTを通時的に見ることにしたのだが、その目的は大きく2つある。1つは、FTがどのように変容するのか、その過程を明らかにすること。もう1つは、NSがNNSの日本語能力の伸びに合わせてFTを変容させているかどうかを見ることである。昨年度は9組の被験者に約4ヶ月間に3回の録音調査を行ってもらった。収集した発話資料を(1)学生アルバイタに文字化してもらい、(2)研究者が文字化チェックを行い、分析資料とした。FTの特徴は「簡略化」にあることが先行研究により多数報告されていることから、「文の長さ」を分析の中心とした。 2.研究成果 NSの発話がどのような過程を経たのか、その全体像をつかむために、「発話交換数」「発話数」「実質的発話数」「相づち的発話数」「実質的発話率」「平均文節数」「平均単語数」「最多文節数」「最多単語数」「重なり率」等を分析項目とした。分析の結果、以下のような考察を得た。 ・第1回目と第3回目の「文の長さ」を表わす項目の結果はほぼ同じであったことから、全体としてはFTに変化がなかった。 ・しかし、標準偏差を見る限りNS間のバラツキの度合いは小さくなっていることが伺えた。 ・第2回目の調査結果から、FTは対話者との人間関係に大きく左右される可能性が指摘できた。 3.今後の課題 今年度までの発話資料の分析により、FTを縦断的に考察する足がかりとなる基礎を得ることができた。しかし、その過程において文字化及び分析項目の認定における問題点が浮かび上がり、より正確に詳細にFTを記述するための研究方法の確立も急務であることがわかった。これらの問題は今後の課題としたい。
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