本研究は、日本語音声の基礎研究とその教育への応用を行うことをおもな目的としている。日本語音声においてまだ発見されていない未知の現象を探すこと、つまり、「基礎研究」を、教育に可能な程度の一般化を目指して行い、最終的には、その成果を教材にまとめ、応用することを目指している。その一年目にあたる本年度は、とくに基礎研究を中心に進め、同時に、最新の(研究代表者のものも含む)研究成果の中から、音声教育に応用可能なもののを探し出すことに力点を置いた。 基礎研究としては、「新」や「旧」をはじめとする接頭辞の語形成に、意味と音調との明確な対応関係があることを発見し、言語学の異なる分野である「意味論」と「音韻論」のインターフェイス(接点)を論じた。また、この種の語の音調が、語としての特徴と同時に、句としての特徴を有していることを、フォーカス(文の焦点)をいう観点から、音声分析装置を使って提示した。 応用としては、漢語の促音化現象と子音の声帯振動の有無との関わりを、教材としてより簡単な形にて提示した。その過程において、初級学習者を対象とした、漢字教材を作成した。 また、論文としてまだ発表はしていないが、文法に根ざした初級文型の発音指導について、とくにフォーカスという観点から捉え、複数の研究会にて発表を重ねた。この分野に関しては、来年度に積極的に学会発表・投稿する予定である。
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